[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
盲目の天使 編 +第三章
二人の距離が縮まる。 一歩一歩。確実に進む陽子。そして、その瞬間を今か今かと待ち続ける柊。 そして、 「やあ。」 柊は、陽子に声をかけた。 期せずして呼び止められた陽子は、不覚にも歩を止めてしまい、 「はい?」 と返事をしてしまった。 「君は運命を信じるかい?」 その男は言った。 「はい?」 陽子は聞き返した。 「あっは!」 特徴的な短い笑い声。陽子は軽く身を引いた。 「質問に質問で返すのは無粋だね。」 「…………なんですか?…」 そりゃそうだ。 突然「運命を信じるか」なんて聞かれても困る。 「だから、僕は君に聞いているんだよ。運命を信じるか、と。」 男はぬけぬけと言う。 そして、陽子はこれに悟る。 「すいません。私、宗教とかには興味ないんで。」 と言って、陽子を男の脇を通り過ぎようとする。 「まあ待ちたまえ。」 柊は、陽子の腕を掴む。 「離してください。これは立派な犯罪ですよ。」 強い口調の陽子。 「う~ん。なかなか冷静な判断だ。ただの女子高生とは思えない。実にいい種だ。」 陽子は柊の手を振り解き、歩を進める。 「ちょっと待ってくれよ。」 無視。 「ん~………」 腕を組み、ちょっと考える柊。 大袈裟。というよりはお約束のその格好は滑稽にも思われた。 そして、 走り寄る。 「ちょっと。」 「もう!一体何なんですか!」 「ちょっとでいいから話を聞かないかい?必ず君の役に立つから。そうだ、立ち話もなんだからどこかのお店に……」 この発言に対して陽子は、激しく憤慨しながら言う。 「私は、宗教にもナンパにも興味はありません!近づかないでください!」 「そんなんじゃないってば、とりあえずお茶ぐらい良いじゃないか。」 いい加減にしつこい柊に対して、とうとう陽子がキレる。 「お断りです!」 激しい剣幕で睨まれる。 さすがに黙る柊。 沈黙。 そして、柊は一つ溜息をつくと、ポケットに手を突っ込んだ。 なにやら、ごそごそとポケットをまさぐり、紙片を一枚取り出す。 「これを君にあげよう。」 そう言って柊が差し出してきたものは、この商店街の商工会主催の福引大会の券だ。 「なんですか。」 「福引券。」 「そんな物は見れば分かります。どうしてそれを私に渡すんですか。言っときますけど、キャッチもお断りです。」 冷たい視線を柊に投げかける陽子。 「大丈夫。これはただの善意だよ。」 「…………」 さらに不覚にも、その券を手にとってしまう陽子。 その次の瞬間。 「じゃね!」 と言って、柊は走り去る。その逃走劇疾風のごとく。 「あの!」 といった時には、陽子の視界から、その黒い男は消え去っていた。 陽子は、自分の右手に握られた券を見て思う。 何だったのか。 と。 |